『拐〜カドワカシ〜』イントロダクション


山荘居間

朋 子: 「……矢澤さん……」
瑞 恵: 「ああ、お願い……私、この人に、捕まって……お願い! 蔵島さん、助けて」

蔵島は、自分の腕を掴んで必死に懇願する矢澤を、無表情に見つめている。

瑞 恵: 「もしかして、あなたも……!? あなたも、この人に捕まったの?」
朋 子: 「………………」
瑞 恵: 「私、こんなふうに捕まらなきゃいけない事なんて……
何にも、何にもないのに!」
朋 子: 「……何にも……ない?」

ビクリと蔵島の身体が震えた。

瑞 恵: 「ええ、そうよ……だから、あなたからも言って!
お金が目当てなら、お父様がなんとでも……」
朋 子: 「そう……お金持ちですものね……あなたのご両親は……」
「……そしてあなたは……愛されている一人娘……」

矢澤の言葉を聞いた途端、蔵島はふっと小さく微笑みを浮かべた。

朋 子: 「……本当に……あなたは……何も知らない……そう……」
「そうね……知らないんだわ、あなたは……」
瑞 恵: 「蔵島……さん?」

オドオドと、いつも怯えるようにしていた蔵島を見慣れている矢澤は、蔵島のその変化に戸惑っていた。

朋 子: 「でもね……無知でいる事が、許される事にはならないという事も……
知った方がいいわ……」
瑞 恵: 「え……な、なに……?」
朋 子: 「何の疑問も持たず……生きてきた事……それが、あなたの罪……」
瑞 恵: 「……蔵島……さ……ん……」

蔵島は矢澤に、艶やかな笑みを向ける。

朋 子: 「罪を……償うがいいわ……そして、同じ所に堕ちてきなさい……」

微笑みながら、ゆっくりと俺を振り返る蔵島……俺は、じっと蔵島を見つめる。

何が、そこまで蔵島を駆り立てるのか……俺にはわからない。
何で、そこまで蔵島が矢澤を憎むのか……俺にはわからない。

しかし、この狂気の果てに……快楽の他に、何か真実が見えるかも知れない。

主人公: 「告げるべき事は告げた……さあ、お前の部屋に案内してやる」

そう言って俺は混乱している矢澤を、これから寝起きさせる部屋へと連れて行った。



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