『拐〜カドワカシ〜』イントロダクション


公園

朋 子: 「……上手くいったみたいね」

背後からの足音に振り返ると、朋子が立っていた。
俺と、俺の腕の中の矢澤を見て、満足そうに微笑みを浮かべている。

朋 子: 「先生、車は用意してあるの?」
主人公: 「ああ、言われたとおりにな……で、このまま言われた場所に行けばいいんだな?」
朋 子: 「ええ……」
主人公: 「それにしても、この後の事はどうする気なんだ?
これじゃ、矢澤の親も黙っていまい」
朋 子: 「それは、大丈夫よ……
明日にも、矢澤さんからお父さん宛てに、手紙が届くもの」
主人公: 「手紙?」
朋 子: 「あんなに信頼していたお父様に裏切られ、瑞恵は悲しいです。とてもお父様と一緒にいられません……ってね」
主人公: 「なるほど……しかし、それだけでは……」

蔵島はゆっくりと近づいて、気絶している矢澤の顔を見つめる。

朋 子: 「……それとマスコミにも、家出の件がリークするようにしておいたわ」
「有名代議士の娘が、父親のスキャンダルに失望して家出したって……ね」
主人公: 「そんな話、マスコミが信じるのか?」
朋 子: 「マスコミは、どんな事だってある程度の信憑性があれば飛びつく物よ」
「それが、面白い題材なら……特に、選挙を前にした代議士のスキャンダル絡みなんだから、放ってはおかないでしょう?」
「……安っぽい新聞や週刊誌が、こぞって面白おかしく書き立ててくれるわ」
主人公: 「……」
朋 子: 「矢澤代議士も、色々と後ろ暗い所があるようだし……
それに家出とはっきりしていれば、警察も誘拐事件とは扱わない……」


「家族だって、これ以上マスコミに騒がれないように、おおっぴらには出来ないでしょうね」
主人公: 「……」
朋 子: 「捜すとしても、自分のコネを使った捜索しかできないはず……」
「もし手紙を疑ったとしても、犯人の目的は自分にあると考えるでしょうね……
例えばそう、政敵とか……」

「……自分の娘の学友と教師の企みだなんて、思いもしないわ」

蔵島に促され、俺は意識を失っている矢澤を車へと運び込んだ。




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